MAGNUM 45

更新日: 2009 年 1 月 7 日

Magnum45

僕が某新聞社でアジアの担当記者だった頃、とある作家さんをタイのバンコクからミャンマーまで案内するというガイドの仕事が舞い込んで来たんだ。果てしなく簡単な仕事っぽかったから、二つ返事で引き受けた。出発日に作家様とそのお連れさんを紹介されたんだけど、これがまた最悪なヤツ。ハードボイルド小説でかなり有名らしいんだけど、まあ全然知らない。そんな素振りを見せたら「あ~山口さんは小説とか読まれない人なんですね~」とか言って初日から面倒臭い雰囲気満開。ちなみにコイツの目的は、ミャンマーに残る旧日本軍への取材。その旧日本軍が麻薬密売の請負人として成功してるってのは結構有名で、そんな話をハードボイルドに書きたいらしい。まぁ、そんなのはどうでもいい。僕は早く終わらせてコイツらとオサラバする事で頭がいっぱいだった。

ミャンマー行きのバスに乗り込むこと12時間、国境の町メーサイに到着。この日はここで一泊するんだけど、国境なだけにヤバい空気がプンプン。そんな事をチラリとも感じない作家さん達は相当お疲れの様子。しょうがないのでとりあえず飯でも食べに屋台へ向う。そして食べ終わる頃には辺りは真っ暗でヤバい雰囲気がさらにパワーアップしてた。屋台を出て宿に向かう途中、後ろから「や、山口さんっ!」と僕を呼んでいる。振り返ると作家様が地面に倒れていた。作家様のこめかみに銃を突きつけるイカレ男、それと離れた木陰にもう一人。う~ん10 0 %強盗だ。「人に舐めた態度取ってっからだよ~」と思いつつ、強盗達との交渉準備。こういう場合は金ですべて解決するってのが決まり。作家様のお連れさんはガタガタ震えてバンビ状態。そんなバンビちゃんに金を出すよう説得。金を受け取って木陰の男に渡すと「オレはコイツをコロシタイダケダ!」なんて吠えやがった。残念ながら金欲しさの強盗ではなく、単純にイカれてらっしゃるようだ。すると作家様は「マ、マグナム45だっ!」と叫び始めた。どうやら逝っちまったらしい「みんな落ち着け、大丈夫コイツの銃はマグナム45なんだっ!」さらに「オレは知っている、コイツは片手じゃ撃てない!撃った衝撃でコイツは吹っ飛ぶはずだっ!コイツはそんな簡単な銃じゃない!大丈夫だっ!」な~んてこった、恐怖のあまり小説の中に入ってハードボイルド分析してたらしい。

こうして悪化していく状況にちょっとあせったけど、金を積みに積んで無事解決。帰還した作家様はスッゴイ早歩きで宿へ戻り、翌朝のバスでバンコクに引き返した。僕の仕事は無事完了した。

Eijiro Yamaguchi

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